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共同テレビジョンにおけるAdobe Premiere Pro CCとAdobe SpeedGrade CCの連携を活かした4Kフィニッシング

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Adobe Creative Cloudベースの4K60p編集室を構築、短納期の4K番組制作にも対応

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 スカパー!の4K専門チャンネル「4K映画」と「4K総合」の放送開始によって、NexTVフォーラムの「Channel 4K」と合わせると、合計3つのチャンネルで4K映像が視聴できるようになった。まだまだお茶の間に視聴環境が浸透しているとはいえないながらも、4Kカメラや4Kテレビが市場を賑わせていることもあって、コンテンツの増加を期待している視聴者も多いことだろう。

 しかし、なにかにつけてデータ量の大きさがネックとなる4K制作である。撮影時の収録はもちろんのこと、編集およびグレーディング時のスムーズな作業を実現するため、プロダクションの各所ではまだまだ「暗中模索」に近い状況が続いているのが現状だ。

 そんななか一歩先を見ているプロダクションが、4K制作に早くから取り組んできた共同テレビジョンである。3G-SDI対応の最新鋭中継車「KR-advance」は全国各地の4K中継で活躍し、さらに撮影から仕上げまでを一貫して手がけるため、2013年8月には4K対応グレーディングルームを開設。そして2015年1月に4K60p対応をさらに推進するべく、Adobe Creative Cloudを採用した4K編集室を新設した。

 今回は、同社技術センター映像制作部 専任副部長の溝口 健志 氏と、編集・技術統括を担当する岡本 広 氏に、Adobe Premiere Pro CCとAdobe SpeedGrade CCの連携を活かした4Kフィニッシングについてお話を伺った。

技術センター映像制作部 専任副部長 溝口 健志 氏
技術センター映像制作部 編集・技術統括 岡本 広 氏

 4K60p編集にPremiere Proを採用

 共同テレビジョンが、2013年8月に4K対応グレーディングルームを開設したきっかけは、試験放送用の4K制作を進める中で、ドラマ撮影部のVEチームがグレーディングを行うようになったことだという。すでに放送開始が発表されていたスカパー!の4K専用チャンネルに合わせて、4K60pに対応できるシステムを構築することとなったのだ。

 当初、有力候補だったDaVinci Resolveはプレーアウトが30pまでしか対応していなかったため、4K60p対応を謳っていたBaselight 4を導入。撮影部と編集部が一体になって制作に取り組んだが、テレビ番組では映画のような長期間の制作体制が整いづらく、長尺ものの番組制作では多くの課題が浮き彫りになった。

岡本氏:
「2013年末にラグビーの早明戦の試合が行われ、国立競技場が解体される前の最後の試合として、J:COM×J SPORTSの依頼でChannel 4K用に撮影を行ったことがありました。

 試合は3時間。撮影したファイルのコピーだけでも2日かかるという膨大なデータで、これをどうやってインジェストするかという点からすでに難題でした。

 4K撮影といえば当初はDPXベースでしたので、24pの流れを踏まえてBaselightをチョイスしましたが、4Kの試験放送が始まるとフォーマットの潮流はHEVCとXAVCにがらりと変わった。テレビ業界には「撮って出し」という作業もある中で、結局DPXベースの作業は時間がかかりすぎるという判断に至りました。

 そこから、XAVC用に短納期を目指すマシーンを構築しようとする気運が高まり、この要望に最も適した製品として、Premiere Proが選ばれたわけです」

 結果的には、Premiere Proは長尺のスポーツや紀行もの、音楽番組や対談などを中心に、Baselightは尺の短いCMやつくり込みの多いドラマ向けにと、それぞれ得意ジャンルで運用することとなった。

Premiere Proは長尺のスポーツや紀行もの、音楽番組や対談などを中心に運用されることとなった

Premiere Proと連携できるSpeedGradeを活用

 編集を担当している岡本氏は色にもこだわりをもっている。長尺編集用のマシーンとして導入されたとはいえ、ソニーのPMW-F55で撮影したものを扱うなら色にもこだわりたいとの思いだ。また、スカパー!の素材ではキヤノンCINEMA EOS SYSTEMのEOS C500で撮影したものも多く、LUTが当てられているものも多いという。そのため、グレーディングも兼ね備えたマシーンにチューンナップするべく、さらなる模索が始まった。そこで目に留まったのが、SpeedGradeである。

 特にPremiere ProとSpeedGradeでは、Direct Link機能により中間フォーマットを生成することなく直接やりとりできるため、短納期を命題とするシステムとしてはこれを利用しない手はなかったという。スピーディな連携で、まず納期が守れるというメリットが大きい。

岡本氏:
「Premiere Proのプロジェクトでとにかく短納期に仕上げたいという場合に、Direct LinkでSpeedGradeにつなげられる手順は、私たちの要望にとてもマッチしてました。4K60pではこのシステムがベストだと思いますね。

 私が担当する作業の中では、人の顔のほくろの部分だけマスクを書いてトラッキングするというような細かい作業は発生しないのですが、SpeedGradeにはセカンダリーも搭載されているところを見て、意外と細かい作業もできるんだなと感心しました。

 それから、初めはスリーホイールをマウスで動かすのは大変だと感じていましたが、海外サイトの情報を参考にコントロールサーフェスとしてTangent Elementを導入したことで、作業が格段に楽になりましたね。

 特にサチュレーションを足す作業が多いので、ホイールを動かしてレベルをつまみで設定して、再生系のパネルのボタン操作でつぎのカットに移る、というような作業がマウスやキーボードに触れずに素早く行えます」

Tangent Elementは、SpeedGradeの各機能をマッピングできるため、ホイールやつまみなどを使って快適な操作が可能になる

4K60p編集室のシステム構成

 システム構成で参考にしたのは、東陽町にあるスカパー東京メディアセンターのシステムである。岡本氏はそこでオペレーターとして使用していたPremiere Proが、4K60pのXAVCをスムーズに動かせることに着目。このシステムは株式会社Tooがシステム構築を担当した当時の最新スペックによるマシーンで、4KビデオプレビューカードにMatorxのMojito 4Kを採用しているのが特長だった。60pをよどみなく再生するには、この4Kビデオプレビューカードの性能が大きく関わってくる。

溝口氏:
「2014年の秋に、フジテレビからの依頼でChannel 4K用のコンテンツを急遽制作することになり、ちょうどそのころに撮影したボクシングの試合の素材を使ったことがありました。ソニーPMW-F55で撮った映像です。

 そのときはまだ新しい編集室はつくられておらず、Mojito 4Kではない別のボードを搭載したマシーンで編集したのですが、残念ながらスムーズな再生ができませんでした。

 せっかく4K60pでスポーツを撮影したのに、再生する際にコマ落ちしてしまってはお客様に幻滅されてしまう。そこでまず、60pがスムーズにプレビューできる環境をなんとかしなきゃという思いが強くなりましたね」

 ちょうどこの時期、HPのワークステーションZ820がZ840にグレードアップ、グラフィックスボードも最新のGTX980が登場して、PCのスペックが上がったことも追い風となった。この組み合わせに、Mojito 4Kを使ったデモを株式会社Tooに依頼したのがInterBEE 2014の直前、ちょうどAdobe CCのアップグレードのタイミングと同時期だったという。このアップグレードでSpeedGradeは「Mercury Transmit」に対応。SDIモニターによるビデオプレビューが可能となっている。

デスク横のラックにWorkstaion Z840とPROMISEのPegasus2 R8を搭載したラックを設置。ラックの上段には20×20のSmart Videohub、中段奥にはローランドのVC-1-DLなどが配置されている

4Kのモニタリング出力にはMojito 4Kから出力したSDI×4を、AJAのHi5-4Kを通してHDMI 2.0に変換する方法を採っている。もう1つのHi5-4KにはHD用にダウンコンしたSDIが入力

 ただし4Kのマスターモニターはコストオーバーしてしまうので、今回の編集室では55インチの4K BRAVIA KD-55X9200Bを設置している。同機はHDMI 2.0のレベルB、いわゆるHDMI 1.4aの帯域に対応する数少ないテレビで、4:2:0であれば60pが入力可能だ。Mojito 4Kから出力したSDI×4を、AJAのHi5-4Kを通してHDMI 2.0に変換する方法を採っている。

 モニターには音も出さなくてはならないので、ミキサー卓にアナログオーディオを送るためにBlackmagic DesignのMini Converter SDI to Audio 4Kを挟んでデエンベデッドしており、フレームシンクロナイザーとしてローランドのVC-1-DLを使って音を1フレーム遅らせる処理も施している。

 また、20×20のルーターとしてBlackmagic DesignのSmart Videohubを設置。入出力系統には、4K BRAVIAに送る4ch以外に、ビデオ編集部オフィス内に送る4ch、HD編集用にダウンコンするための入出力も用意されている。

Smart Videohubのソフトウェアコントロールパネル。アイコンをクリックする簡単な操作で設定を変更できる

共同テレビジョン4K60p編集室システム系統図(施工:Too)

 素材用のストレージはPROMISEのPegasus2 R8を採用している。Z840がこれまたタイミング良くThunderboltインターフェースにオプション対応していたことで、ローコストにRAIDが組めただけでなく、デイジーチェーン接続によりデータの移動も簡単に行えるようになった。
 データドライブは1TバイトのHDDを4つ入れてRAID 0に設定。完成データをこのRAIDに書き出して、納品時にはここからコピーするようにしている。持ち込まれる納品ディスクがポータブルHDDの場合、XAVCだと2時間尺で約500Gバイト程度になる。

 スカパー!に納品する際は、1TバイトのHDDにコピーするのがスタンダードとなっている。30分ものなら約40分でコピーできるそうだが、厳密にはHDDの種類によって転送速度も変わるため注意を払っているとのことである。

 また、ファイルベースとはいえ、スカパー!の4K専門チャンネルではテープ納品と同様に冒頭のカラーバーやクレジットなどを入れ、さらにデータは正副の2つを用意する必要がある。納品時のスピードが求められるのにはこのあたりにも理由があるのだ。

スカパー!納品用のポータブルHDD。ケースにテープ納品に使われていたシールが流用されているのは現場にとって安心感がある

スカパー!の4K専門チャンネルではテープ納品と同様に正副の2つのデータを用意する必要がある

良質な4K番組制作を目指した今後の取り組み

 スカパー!といえばサッカーなどのスポーツ中継が目玉番組である。撮影現場ではソニーのXAVCサーバーPWS-4400で収録し、そこから直接インジェストすることもある。また紀行番組も多いので、同社ではディレクターにソニーPXW-FS7でロケ撮影してもらうことも考えている。Adobe Media Encorderを通してプロキシファイルをエンコード、そこからオフライン編集データをPremiere ProとSpeedGradeでフィニッシングするという段取りだ。

 新しいシステムを構築したとはいえ、今後もさまざまなワークフローに対応する必要があるようだ。いずれにしても短納期の4Kフィニッシングを模索する中で、いくつかの良きタイミングに恵まれて誕生したこのシステムが、4K映像のコンテンツ増加を後押しすることは間違いないだろう。共同テレビジョンにおける4K映像制作の取り組みに、今後も注目したい。

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