経済産業省中小企業庁が月内の閣議決定を目指す2015年版「中小企業白書」の概要が9日、分かった。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵が十分に及んでいない中小企業が質・量両面で人材不足に直面している課題を指摘。インターネットを有効活用するなど、「人材確保の方策を多様化していくことが必要」と呼びかけている。
白書では中小企業の景況感について消費税増税後の悪化から「足元では持ち直しの動きも見られる」と分析した。ただ、円安で原材料の仕入れ単価が上昇して採算が厳しくなっており、「販売価格に転嫁できる対策が重要」と説明する。
また、大企業の海外進出が加速したことで相互依存関係が希薄化し、中小企業でも自ら需要を開拓する必要性に迫られている。なかでも優秀な人材の確保や技術開発の拡大に成功した企業の収益率は「大企業をしのいでいる」と強調した。
ただ、アンケートでは、「人材を確保できている」と答えた中小企業は4割強にとどまり、全国的に人手不足が広がっている。「応募はあってもよい人材がいない」という声が多く、質と量両面で人材確保が壁にぶつかっている。
そうしたなか、採用ではハローワークや知人・友人の紹介など従来の「顔が見える手段」が重視されており、「方法や供給源が極めて限られている」と分析。自社ホームページを活用したりインターンシップを実施したりする企業は少なく、「さまざまな採用手段の底上げ」を要請している。
一方、小規模企業(製造業なら従業員20人以下)の白書を今回初めて策定した。事業所数がピーク時から小売業で50%減、製造業で46%減とほぼ半減していることなど、日頃焦点が当たることが少ない小規模企業の実態把握に努めている。